院卒者試験では、基礎能力と区分別の専門知識に加え、記述、政策課題討議、人物試験への準備が必要です。まず専門区分と必須・選択科目を確認し、資料解釈では分母、推論では前提と結論、討議では目的・制約・代替案を説明する練習を重ねます。このガイドの例題は独自の練習問題です。
受験資格と試験の対象となる方
大学院修士課程等の修了(または修了見込み)が前提で、1996年4月2日以降生まれの方が対象です。
総合職試験(院卒者試験)は、政策の企画立案や調査・研究に従事する係員を採用するために人事院が行う試験で、中央省庁の政策部門を志望する大学院修了者等を想定しています。
受験できるのは、1996年4月2日以降に生まれた方のうち、大学院修士課程または専門職大学院の課程を修了した方、2027年3月までに修了する見込みの方、人事院が同等の資格があると認める方です。
人事院は、受験資格のある方には院卒者試験を受験することを推奨しています。ただし、合格した後に大学院を修了できなかった場合は採用されないことがあると受験案内に明記されていますので、見込みで受験する方は注意してください。
日本国籍を有しない方や、国家公務員法第38条により国家公務員となることができない方(懲戒免職処分から2年を経過しない方など)は受験できません。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等
資料解釈:割合の分母をそろえる
複数の集団を合わせるときは、割合を単純平均せず、人数や件数から全体の割合を求めます。
基礎能力試験には判断・数的推理と資料解釈が含まれます。資料を読むときは、何に対する割合なのか、二つの集団の大きさが同じかを確認します。これは解法の練習であり、公式問題ではありません。
例えば、割合が上がっていても対象者数が減れば実数が減ることがあります。反対に実数が増えても、分母がそれ以上に増えれば割合は下がります。式を書く前に、求めるものが実数、割合、増加率のどれかを区別してください。
練習問題
架空の窓口Aでは申請が300件あり、その60%がオンラインでした。窓口Bでは申請が200件あり、その30%がオンラインでした。両窓口を合わせたオンライン申請の割合を求めてください。集計期間は同じで、重複する申請はありません。
解答を表示
48%です。
Aは300×0.60=180件、Bは200×0.30=60件なので、オンラインは合計240件です。全申請は500件ですから、240÷500=0.48。60%と30%の単純平均45%では、件数の異なる窓口を同じ重みで扱ってしまいます。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等
第1次試験の構成:基礎能力試験と専門試験(多肢選択式)
第1次試験は基礎能力試験(30題・2時間20分)と専門試験(多肢選択式・40題解答・3時間30分)です。記述式は第2次試験です。
第1次試験は筆記試験のみで、基礎能力試験、専門試験(多肢選択式)の順に実施されます。種目ごとの題数と時間は次のとおりです。
基礎能力試験は知能分野24題(文章理解10題、判断・数的推理〈資料解釈を含む〉14題)と知識分野6題(自然・人文・社会に関する時事、情報)で構成されます。専門試験(多肢選択式)は、区分ごとに定められた出題分野から選んで解答します。
専門試験(記述式)は第2次試験の筆記試験として実施されます(詳細は第2次試験の節で解説します)。
| 試験種目 | 解答題数 | 解答時間 | 配点比率 |
|---|---|---|---|
| 基礎能力試験(多肢選択式) | 30題 | 2時間20分 | 2/15 |
| 専門試験(多肢選択式) | 40題解答 | 3時間30分 | 3/15 |
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等; 総合職試験(院卒者試験)|国家公務員試験採用情報NAVI — 日程・正答番号掲載期間・過去問・合格点公表
専門試験の9区分と行政区分の出題構成
専門試験は行政など9区分から1つを選び、行政区分では4つの選択枠ごとに必須問題と選択問題が決まっています。
専門試験の区分は次の9つです。自分の専攻に合う区分を1つ選びます。
行政区分では、多肢選択式の専門試験は選択ⅠからⅣまでのいずれかの枠を選んで解答します。必須問題と選択問題の内訳は次の表のとおりです。
記述式の専門試験は、政治学、行政学、国際関係、思想・哲学、歴史学、文学・芸術、公共政策、憲法、行政法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、国際法、経済理論、財政学、経済政策の17科目22題から2題を選択します(同じ科目から2題選択可能)。
人間科学やデジタル、工学などの理系区分は、基礎科目と選択科目を組み合わせる構成です。出題分野の詳細は受験案内の別表(専門試験出題分野及び出題数一覧表)で必ず確認してください。
- 行政
- 人間科学
- デジタル
- 工学
- 数理科学・物理・地球科学
- 化学・生物・薬学
- 農業科学・水産
- 農業農村工学
- 森林・自然環境
| 選択枠 | 必須問題 | 選択問題 |
|---|---|---|
| 選択Ⅰ(政治・国際系) | 政治学10題・国際関係10題・憲法5題の計25題 | 行政学、国際事情、国際法、行政法、民法、経済学、財政学、経済政策の30題から15題 |
| 選択Ⅱ(人文系) | 政治学・国際関係・憲法(計5題)、思想・哲学4題、歴史学4題、文学・芸術3題など計25題 | 思想・哲学、歴史学、文学・芸術、心理学、教育学、社会学など30題から15題 |
| 選択Ⅲ(法律系) | 憲法7題・行政法12題・民法12題の計31題 | 商法、刑法、労働法、国際法、経済学・財政学の18題から9題 |
| 選択Ⅳ(経済系) | 経済理論16題、財政学・経済政策5題、経済事情5題、統計学・計量経済学5題の計31題 | 経済史・経済事情、国際経済学、経営学、憲法、民法の15題から9題 |
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等
必須問題と選択問題から学習計画を立てる
行政区分の選択Ⅰ(政治・国際系)では政治学・国際関係・憲法の計25題が必須で、行政法・民法・経済学などは選択問題の範囲です。選択枠ごとに必須問題は異なります。
行政区分の選択Ⅰで受ける場合、政治学・国際関係・憲法の25題は必ず解く必須問題です。行政法、民法、経済学などは30題の選択問題から得意な分野を15題分選ぶ設計で、記述式は2題分を17科目から選びます。どの科目で選択問題と記述式を埋めるかが学習量を決める最初の分岐点になります。
法律専攻の方は選択Ⅲ(法律系)が現実的な場合もあります。憲法・行政法・民法が必須の計31題で、選択問題は18題から9題です。経済系なら経済理論16題が必須の中心になります。このように必須の内訳は選択枠ごとに異なるため、まず自分の区分・選択枠を決めてから学習を始めてください。
国家公務員試験採用情報NAVIではこの試験の過去の試験問題が掲載されており、合格点や平均点も公表されています。まず過去問に目を通して、必須科目の出題水準と自分の現在の距離を測ることから始めるのが確実です(これは一般的な学習アドバイスです)。
科目を選んだ後は、文章に明記された条件と、そこから必ず導ける結論を区別する練習をします。「すべて」「一部」「必ず」といった範囲を示す言葉を落とさないことが重要です。
練習問題
次の二つだけを前提とするオリジナルの論理問題です。①電子申請を利用した人は全員、確認番号を受け取った。②佐藤さんは確認番号を受け取っていない。必ず正しいのはどれですか。A:佐藤さんは電子申請を利用していない。B:確認番号を受け取った人は全員、電子申請を利用した。C:佐藤さんは窓口で申請した。
解答を表示
Aです。
電子申請を利用すれば確認番号を受け取る、という条件の対偶は、確認番号を受け取っていなければ電子申請を利用していない、です。Bは条件の向きを逆にしており、別の方法でも確認番号を受け取れる可能性があります。Cについては、佐藤さんがそもそも申請したかどうかが示されていません。前提にない事情を補わずに判断します。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等; 総合職試験(院卒者試験)|国家公務員試験採用情報NAVI — 日程・正答番号掲載期間・過去問・合格点公表
第2次試験と英語スコアの加算
第2次試験は専門試験(記述式)を含む筆記試験と、政策課題討議試験・人物試験で構成され、英語の外部試験スコアにより総得点に加算されます。
第2次試験の筆記試験(2026年度は4月12日)では、専門試験(記述式)として原則2題・解答時間3時間(配点比率5/15)を解きます。工学区分では選択科目により解答題数が1題または2題になります。
政策課題討議試験はグループ討議によるプレゼンテーション能力やコミュニケーション力をみる試験で、おおむね1時間30分です。人物試験は人柄や対人的能力についての個別面接です。筆記試験の際には、人物試験の参考として性格検査が行われます。
外部英語試験の成績に応じた加算があります。対象試験、成績の有効期間、証明書の提示・提出方法は、その年度の人事院の案内で確認してください。英語の加算があっても、ほかの試験種目の基準を無視できるわけではありません。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等
政策課題討議:提案、反対意見、修正をつなぐ
政策案は、目的と制約を明らかにし、ほかの参加者の指摘を踏まえて具体化します。
政策課題討議試験はグループ討議を通じてプレゼンテーション能力やコミュニケーション力などをみる試験です。ここでは、短い架空の場面で、根拠のある提案と応答を練習します。全試験の再現や公式採点基準ではありません。
提案では「誰の困りごとか」「どの制約を守るか」「効果を何で確かめるか」をつなげます。反対意見には、単に賛否を述べるのでなく、指摘された問題を確かめ、必要なら方法を修正します。以下の数値は練習用の仮定です。
練習問題
架空の行政窓口で待ち時間の改善策を検討します。予算は100万円です。オンライン予約導入は70万円、電話予約の受付研修は20万円、案内表示改善は10万円です。すべて同時実施でき、記載額以外の費用はこの練習では考えません。住民の一部はインターネットを利用できません。①予算内の案を示し、②「オンラインだけでは利用できない住民がいる」という意見に答え、③導入後の確認方法を述べてください。
解答を表示
短い発言例:「三つを組み合わせる案を提案します。70万円、20万円、10万円で合計100万円です。オンライン予約で来庁時刻を分散させつつ、電話予約も受け付け、案内表示で両方の方法を知らせます。インターネットを利用できない方へのご指摘は重要ですので、予約方法をオンラインに限定しません。導入前後で同じ曜日・時間帯の待ち時間と利用者の困りごとを調べ、電話受付に負担が集中していないかも確認します。」
予算制約を計算で確認し、利用機会の違いに具体的な代替手段で応じています。待ち時間が必ず減ると断定せず、導入後に検証する方法を示した点も重要です。これは短い応答のモデルであり、約90分の討議全体の発言量や進行を示すものではありません。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等
受験前に確認したい最終チェックリスト
日程・受験票・開始時刻・電子機器・配慮申請の期限を受験案内で確認し、詳細はNAVIで照合してください。
申込みから当日まで、次の点を受験案内で確認しておきましょう。2026年度の日時はすべて終了しているため、次年度は改めて公式案内を確認してください。
試験対策では、基礎能力の誤答を「条件の読み落とし」「計算」「根拠のない推測」などに分け、解き直します。記述と討議は、理由を明示した説明を実際に書く・話す練習が必要です。最終合格後も各府省の採用選考があり、試験合格だけで採用が決まるわけではありません。
- 専門区分と必須・選択科目を受験案内の別表で確認する。
- 割合の分母や推論の条件を説明しながら解き直す。
- 記述式の答案を書き、政策課題への短い提案と応答を練習する。
- 次回の申込期限、受験票、配慮申請、英語成績の扱いは最新の公式案内で確認する。
参照した公式資料: 人事院 2026年度 総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内 — 受験資格・試験種目・別表(専門試験出題分野)等; 総合職試験(院卒者試験)|国家公務員試験採用情報NAVI — 日程・正答番号掲載期間・過去問・合格点公表
参照した公式資料
事実確認済み:
